第520話:業務プロセスの自動化とは?(その3)

2017年1月30日
前々回記事『第518話:業務プロセスの自動化とは?(その1)』では、
  • [A] 工程間における案件情報の受け渡しを自動化する
  • [B] とある工程における処理を自動化する
という業務プロセスの自動化についての2つの視点について述べました。

また、前回の記事『第519話:業務プロセスの自動化とは?(その2)』では、『[A] 受け渡しの自動化』が適用可能な範囲と実現方法について述べました。


今回の記事では『[B] 処理の自動化』が適用可能な範囲と実現方法について、整理してみたいと思います。


どの様な「処理」が自動化できるのか

◇ 完全な自動化(自動工程)

『[A] 受け渡しの自動化』が「とある工程から次の工程への案件情報受け渡し」をコンピュータに任せてしまう発想だったのと同様に、『[B] 処理の自動化』は「とある工程内の作業」をコンピュータに任せてしまいます。

たとえば「見積書の作成承認」のような人間依存度の高い業務プロセスにあったとしても、
  • 見積書 PDF ファイルを作成する
  • ファイルを添付してメール送信する
  • 見積概要を社内ソーシャルに投稿する
といった工程であれば、完全にコンピュータに任せてしまうことが可能です。

※ ちなみに『[A] 受け渡しの自動化』と対比させる必要が無い場合には、(『自動化』という言葉を使わず)、『業務プロセスの一部工程を「無人化」する』といった表現の方が分かりやすいかも知れません。


◇ 部分的な自動化

一方で、完全に任せてしまうわけではない工程もあります。

たとえば「見積書の作成承認」という業務プロセスにある「見積案を作成する」という工程で言えば、
  • 見積総額を計算する
  • 消費税額を計算する
といった支援機能は業務の省力化に貢献します。しかし、このケースは「見積書の作成」という工程が無人化できている訳ではなく、何らかの人間入力(ヒューマンインターフェース)が必要です。したがって、この様な工程は「ヒューマン工程」(人間工程)に分類すべきだと言えるでしょう。

[見積書の作成承認プロセス]



◇ 工程の分類

ところで、国際標準記法において「工程」は、以下の7種類に分類されます。

※ 以下の中にある「送信工程」と「受信工程」はそれぞれ「送信イベント」と「受信イベント」とほぼ同義です。つまり5種類と考えることも可能です。
  1. サービス工程:パラメータだけで設定される自動工程
  2. スクリプト工程:カスタムコードがセットされている自動工程
  3. ビジネスルール工程:ルールエンジンで処理される自動工程
  4. 送信工程
  5. 受信工程
  6. ユーザ工程:ユーザとの情報やり取りがある工程
  7. (マニュアル工程:システムが検知できない人間等の作業工程)
そして、この分類で言えば、1~5の工程が「処理の自動化」(自動工程)に該当します。

自動工程においては、ワークフローシステム自身(ワークフローエンジン自身)が、
  • 案件データや外部データを参照し、
  • 必要な計算を行い、そして
  • 案件データや外部データを更新
します。その工程において人間がかかわることはありません。(つまり、入力フォームといった「ヒューマンインターフェース」はありません)


◇ 自動工程の具体例

近年の業務システム(ワークフロー/BPM/ERP)であれば、様々な自動工程を組み込む(デザインする)ことが可能です。

たとえばクラウド型ワークフロー【Questetra BPM Suite】であれば、以下のような自動工程を配置できます。どの「自動工程」も灰色アイコンで表現されます。(一方で、ユーザ入力が必要な「ヒューマン工程」は水色のアイコンで表現されています。)
  • 数値データの四則演算
  • 日付データの加算減算
  • 文字列データの結合
  • 案件データを挿し込んだ PDF ファイルの生成
  • Google Drive などの外部ストレージへのファイル保存
  • 乱数の生成 (Addonによる拡張)
  • パスワードの生成 (Addonによる拡張)
  • 文字列データの文字数カウント (Addonによる拡張)
  • 日付データの和暦変換 (Addonによる拡張)
  • 社内ソーシャルへの自動投稿 (Addonによる拡張)


どの様な設定で処理が自動化されるのか

ワークフローシステムが「Webアプリケーション形態」の場合、自動工程は「サーバでの処理」となります。

クラウド型ワークフロー【Questetra BPM Suite】であれば、自動工程アイコンを業務フロー図に配置し、そのアイコンのプロパティを設定することで実現します。以下にあるキャプチャを参照して頂ければわかるように、「サービス工程」(サービスタスク)の設定であればプログラミング知識を必要としません。
  • 『サービスタスク(データ設定)』 M227
  • 『サービスタスク(PDF 生成)』 M228
  • 『サービスタスク(Google ドライブ)』 M229
  • 『スクリプトタスク』 M230
  • 『サービスタスク(XXXX)』 M415 ←Addonによって予め拡張したもの
ワークフローシステムとして稼働させた後は、案件が到達する度に自動的に処理されるようになります。

<モデリング画面:「PDF生成」の設定画面>

<モデリング画面:「承認通知」の設定画面>

<モデリング画面:「社内ソーシャル投稿」の設定画面>

近い将来の自動工程

昨今、日本では生産性向上の議論が非常に活発です。

たしかに今後、人工知能(AI / Artificial Intelligence)の実用化が進めば、
  • 長文文章を要約する
  • 質問文に対する回答文を書く
といった工程も、次々と「自動工程化」されていく可能性があります。


しかし、そもそも現状においてどのような工程が存在しているか、が把握されていなければ自動化は実現できません。

まずは日常的に繰り返し行われる「工程」が、どんなインプットで、どんなアウトプットになっているのか、を常に捕捉できる体制を整備する必要があると言えるでしょう。


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