第576話:プロセス改善物語(SaaSベンダー編3)

2018年2月26日

業務:アイコン作成やポスター制作など

新しい業務プロセス定義で、社内からの「依頼」を一元的に管理できるようになった。

マーケティング部でのデザイン案件、製品開発部でのデザイン案件、営業部でのデザイン案件、、、そんな依頼を「チーム」として効率よく対処できるようになった。また、デザイナ同士がお互いの制作物に興味を持つようになり、各デザイナのスキルアップにも寄与していると思う。

※参照:「第574話:プロセス改善物語(SaaSベンダー編1)」、「第575話:プロセス改善物語(SaaSベンダー編2)

課題:納品スケジュールが守れないケースも

ただ、それでも、「納期」に間に合わなくなるケースが発生している。

たとえば、「急ぎの依頼」が入ると「通常の依頼」があおりを受けてしまうのだ。特に「新サービスのリリース」「新しいキャンペーンの準備」といった大きなプロジェクトが動きはじめると、様々な「急ぎの依頼」が発生する。結果として「締切に融通が利く通常の案件達」が納期に間に合わなくなってしまう。

外部リソースを活用するなどしてでも「制作スケジュールを守れるデザインチーム」でありたい。
[デザイン依頼対応プロセス]


解決:アウトソース活用

言うまでもない話ですが、繁忙期における「外部リソースの活用」は有効です。

たしかに、『依頼受入金額(契約額)』が「作業担当者」の評価や報酬に反映される人事制度が機能しているなら(デザイナの収入増に直結するなら)、社内立候補を募り、積極的に社内の「作業担当者」を指名するのも良いでしょう。しかし、その「肯定的に考えられる仕事量」にしても、限界はあります。

このワークフロー定義では、外部委託フローが追加されています。

具体的には、『2.担当者の指名』の工程や『3.成果物の制作』の工程において、『3x.制作の委託』に進む経路が追加されています。(ユーザ型データ項目『作業担当者』の名称が『作業担当者もしくは委託担当者』に変更されています)。外部に委託できるものは外部に委託する、という処理が行えるようになります。

考察:クラウドソーシング

インターネットや Cloud の技術進化に伴って、「Crowd Sourcing」(不特定多数の人への外注)が注目されています。

日本でも、政府の推奨するモデル就業規則に「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」という文言が明記される(2018年2月)など、「自分の空き時間を内職に使う人」が今後より一層増えていきそうな状況です。

もちろん、「未公表/社外秘の事実に基づくデザイン作業」といった「社外へのアウトソースが許されないデザイン案件」もあります。したがって、多くの会社では「一定規模のデザインチーム」を維持し続ける必要があります。

しかし、従来のアウトソーシング手法(オフショア等も含む)と比べても、Crowd Sourcing の「委託費」や「委託管理の手間」が大幅に下がったと実感している人は少なくありません。「品質」についても、「Crowd Sourcing プラットフォーム内での評価制度」があるため、成果物の納期・提案クオリティ・コミュニケーションへの回答、など様々な面で高いレベルにあると言えます。またその他にも「デザイン業務のインプットとアウトプットを見直すキッカケにできる」や「外部者視点からの意見を吸収できる」といったメリットもあげられるでしょう。

今日では、業務プロセスによっては、その特定の「工程」について「全面的に Crowd Sourcing に依存する」という考え方も、十分に検討する価値があると言えます。

<具体的な「Crowd Sourcing」の例> ※ クラウドワークス社の利用例

なお、日本の所得税法では、「原稿料」や「デザイン料」などを個人に対して支払う際、その支払金額に応じた所得税(及び復興特別所得税)を差し引いて支払う必要があります。(「源泉徴収義務者」は、その後、翌月10日までに国に納付します)。そして、年間支払総額が50,000円を超えるような受託者がいる場合には、年末に、(社員ごとに「給与所得の源泉徴収票」を作成するのと同様)、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」(国税庁用・受託者用)を作成しなければならないケースがあります。

<支払う側の会計処理の例> 税率:10.21%
広告宣伝費 10,800 / 普通預金(〇〇銀行) 9,779
            預り金(源泉所得税) 1,021

ただ、その際に必要となる「マイナンバー」について、(委託業務中のコミュニケーション方法に依存しますが)、その「本人確認」は容易ではありません。特に「なりすまし」については、全く見抜けない可能性もあります。クラウドソーシングの活用は、コンプライアンス上のリスク回避の観点に影響される可能性があり、場合によっては「特定の受託者に大きく依存しない」といった経営管理上の工夫が必要になるかもしれません。

<オペレーティング画面 : 3b デザインレビュー>

<データ項目一覧画面>




[雛形ダウンロード (無料)]

<類似プロセス>

≪関連記事≫

[英文記事 (English Entry) ]

0 件のコメント :

コメントを投稿