裁判プロセスを BPMN で描く (刑事訴訟の流れ)

2015年8月24日
前回は日本における「民事訴訟」について、そのプロセス図(BPMN図)を紹介した。(BPMN: Business Process Model and Notation)

以下は日本における「刑事訴訟」の裁判プロセスを表している。

このプロセス図は、刑事裁判における「三審制」や「簡易裁判所の位置づけ」の概要理解に役立つ。また「民事訴訟」の裁判プロセスと比較することで「民事訴訟と刑事訴訟の違い」についても理解できる。

例えば、民事裁判では「簡易裁判所が第一審」の場合の控訴審が「地方裁判所」になっているのに対して、刑事裁判では「高等裁判所」にてその控訴審が開かれることは、意外と認識されていない。あるいは、民事裁判では「原告」による「訴状の提出」が裁判のきっかけ(トリガー)になっているのに対して、刑事裁判では「検察官」による「起訴状の提出」が裁判のきっかけとなっている点も、フロー図で認識することで理解が進む。

法律文にせよ、社内規定にせよ、その「ルール」を理解するうえで「プロセス図」は欠かせない。

<参照>

※ いま日本で導入検討されている「司法取引」は、起訴状を提出するこの「検察官」が主人公だ。はたして犯罪組織の「黒幕」を供述させることができる制度になるか、注目されている。

[刑事裁判フロー]

[比較:民事裁判フロー]

もっともプロセス図だけから、「細かい規則」までを読み取ることはできない。

例えば、検察官が起訴状を提出する(公訴する)には被害者からの「告訴」を要するケース(親告罪)があるといったルールや、一般市民による検察審査会によって「二度の起訴相当」が決定された場合には指定弁護士により「強制起訴」されるといったルール(2009年以降)については、このプロセス図からは読み取れない。(大物政治家小沢一郎氏の蓄財疑惑「陸山会事件」で記憶に新しい)


あるいは、レアケースであるが故に接続矢印(シーケンスフロー)の記載されていないルートもある。

すなわち、第一審判決の後、「第二審を飛ばして最高裁判所に『上告』(跳躍上告)するルート」が描かれていない。つまり、第一審の判決に対して「事実認定や量刑」(事実審)に不服はないものの、その前提となった「法律文の解釈」や「法律の存在そのもの」に対して疑念がある場合には最高裁判所による「法律審」を求めることになるのだが、プロセス図の可読性を維持するために記載していない。実際、第二審を「双方合意のもと通過」とすれば、ワークフロー運用の視点でも問題はない。(民事裁判における「飛越上告」と同じ)

ちなみに、東京地裁が「米軍駐留(刑事特別法)そのものが違憲ゆえに無罪」とした判決の後、検察により「跳躍上告」され、最高裁によって「米軍駐留は違憲とは言えない」とされた「砂川事件」(1959)は、今日の「安保法制議論」(集団的自衛権の一部容認議論)で一躍有名になった。


なお、「高等裁判所が第一審になるルール」(内乱罪)についても、過去に事例がないルールであり、プロセス図には記載されていない。

[刑事裁判フロー:「0y.公訴の提起」画面]

<データ項目一覧画面>


[雛形ダウンロード (無料)]
<類似プロセス>
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[英文記事(English Entry)]

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