第532話:他システムへの記録、急がば回れ(改善編)

2017年4月24日

プロセス見直しの季節

4月。

日本では「新しい1年が始まる月」です。

国の会計、地方自治体の会計、学校の新学年などが、4月に始まるだけでなく、新社会人の入社式も4月に一斉に行われます。(約2割の日本企業は4月に会計年度を始めます)

日本において4月は、「業務プロセスの改善モチベーションが上がる月」あるいは「業務プロセス改善にはモッテコイの月」と言えるでしょう。

そして当ブログを運営している Questetra 社においても、4月は業務プロセスの更新量(ワークフロー・アプリのバージョンアップ回数)が増えます。

あえて所要時間を伸ばす?

今回紹介する業務プロセスは、「全工程の所要時間を伸ばす」という少し変わった改善例です。

普段の業務改善は、日頃の業務中に感じた「不満」や「課題」に対して『フローの改善』や『データ入力画面の改善』を考えるのが常です。
  • 工程の自動化
  • ダブルチェック工程の追加
  • ガイド文の追加
  • 便利ボタンの設置
そして、その多くの場合、「トータル所要時間を少しでも早める方向性」を模索します。


しかし、年度の区切りである4月においては、「全体集計作業を通じて感じた非効率」について対処したくなる場合もあります。この業務プロセス(ワークフロー・アプリ)では、あえて途中滞留させる変更が行われています。(ヒューマン工程「x.差戻滞留」の追加)

※ 改善前の業務プロセス: 第511話:振替伝票ファイルを自動生成させる(Excel-CSV)


[請求書発行プロセス-滞留]

ミス発生率の計測

請求書発行プロセスは、ミスの許されない業務の一つです。

正確な請求データをもとに「売掛金/売上高」が記録され、その後の回収で「普通預金/売掛金」が記録されるべきです。

しかし実際の現場では「やり直し」が発生しています。たとえば Questetra 社にある同様の人間処理プロセスでも、昨年実績として 2.8% の確率で「やり直し」が発生していました。
  • 「お客様住所や名称」の修正
  • 「数量や金額」の修正
  • 「発行日や入金期限」の修正

もちろん、原因は様々であり、その中には「止むを得ないやり直し」も含まれます。
  • 注文受理から請求までの間に情報が変更されていた(お客様の担当者の変更)
  • 担当営業が「注文書の記載内容」を転記ミスした
  • そもそも「注文データ」が間違っていた

しかし、いずれにせよ、請求書(請求データ)をお客様が受け取った際に「全ての工程をやり直す」となれば、請求承認処理をやり直す手間に加えて会計システムのデータも手作業で修正しなければなりません。

そう言った「イチからのやり直し処理」は「大きなムダ」と言わざるを得ません。

やり直しと差し戻し

この業務プロセス改善では、経理マネージャの『x.差戻滞留』という滞留工程が追加され、下流工程(会計システムへのデータ連携)への進捗が止められます。すなわち、しばらくの間(例:月末まで)は、最上流まで差し戻せる状態を保ちます。(全体スピードを上げるより「大きなムダ」の発生リスクを下げる)


たしかに『売上高』などのデータは、一日でも早く会計システムに取り込みたいものです。「月次決算の高速化」をさらに進めて「日次決算を目指す」というのも経営管理体制としては素晴らしい方向性だと言えます。

ただこの例の様に、「業務案件をゆっくりと流すことによって、ある程度のデータ修正を吸収できる業務プロセス」も、業務プロセス改善の一つの方向性と言えます。

<修正モデリング動画(8倍速)>


<データ項目一覧画面>


[雛形ダウンロード (無料)]
<類似プロセス>
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[英文記事 (English Entry) ]

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