第514話:政治家こそ「生産性向上」を実践して見せよ!

2016年12月19日

政治家や官僚達のワーク・ライフ・バランス


日本も他の先進国と同様、既存の「福祉国家の路線」に限界を感じている。

つまり「行政のスリム化」(簡素な効率的政府)という基本方針については、どの政党も合意するところとなっている。時代の流れには逆らえない。

※ ◆1930年代に起きた倒産の連鎖(世界恐慌)を経て、人類は「単なる自由放任主義」を否定し、大きな政府による「社会保障」を肯定するに至った。 ◆1970年代に起きた経済の停滞(オイルショック)を経て、人類は「福祉国家の非効率」を自覚し、小さな政府による「競争社会」への回帰を容認するに至った。 ◆1990年代以降の企業活動は国境を越え税収確保も困難となり、またインフラ維持や医療費増加もあり、結果として既存の「福祉国家路線」は立ち行かなくなる。


しかしながら「国会における行政効率化の議論」は全くかみ合わない。

たとえば、(1)「ハンコ行政」をやめる、(2)「特殊法人の民営化」を推進する、(3)「健保・年金・所得税などのバラバラ徴収」を一元化する。。。 議論すべき改革の方向性は多種多様だ。しかしどんな方向であっても、大きくなってしまった政府を「小さくする方法」や「小さくする手順」について、合意を形成するのは容易ではないようだ。

その結果、国会議員達は同じような質問を繰り返し、内閣は同じような答弁を繰り返す。

『質問書』は深夜に提出され、『答弁書』は夜中に作成され、『大臣レクチャー』は早朝に行われる。国会自身が「行政の肥大化」を助長させている。彼らの言う「生産性向上」は、もはや寝言でしかない。


国会議員による質問方法


そもそも国会議員の仕事は、テレビ映りの良い「議場パフォーマンス」ではない。

民間に言わせれば、朝9時から夕方まで大臣ほか時給の高い人達を拘束しつづける委員会審議なんぞ、単なる「長時間会議」にしか過ぎない。もし「取締役会」が朝から晩まで開催され、挙げ句の果てに一部の取締役達が「退席アピール」をしているとすれば、投資家達はどう思うだろう?

内閣提出法案や国政全般について正すべき事項があると感じるなら、「質疑」よりも「質問」(質問主意書)をもっと多用すべきだ。そして、(民間のFAQサイトではないが)、質問をするときは過去の質問(FAQ)を参照すべきだ。あえて同じ質問をしたいなら、「FAQ-20161213-01 の答弁内容に変化はないか?」と聞けば良い。そうすれば内閣は「はい」とクリックするだけでよくなる。

「審議時間が短い」とだけ連呼する議員に、「国益」を語る資格はない。(むしろ質問の数をKPIとせよ)

[内閣答弁作成プロセス]



内閣答弁の自動化


今年、日本の官僚達は、人工知能(AI)に「国会答弁の下書き」を作らせる実証実験を始めた。

業務プロセスにおける工程の一部を自動化する試みであり、メディア達はおおむね肯定的に捉えている。同じような質問が多い現状を鑑みるに、確かに「生産性」は向上するだろう。

しかし「業務プロセス改善」の視点でいえば、「それはそれで良いが、もっと改善すべき点があるのではないか?」ということになる。つまり、そもそも「質問書の提出は22時まで」とか、「大臣レクチャーは朝7時から」とか、そういう現状を根本から見直さなければならない。


「生産性向上」の範を示せ


「国会答弁書作成は帰宅後自宅で!」と言い出した話も似ている。

残業削減/テレワーク推進の旗印を掲げ実行に移すこと自体は、とても好感が持てる。しかしこれも、「それはそれで良いが、もっと改善すべき点があるのではないか?」という議論をしなければならない。つまり「作業者の変更」や「作業場所の変更」だけでは、抜本的な生産性向上にはつながらないのだ。

あえて「見直し方針」を例示するなら「毎日の委員会時間は最大でも午前2時間/午後2時間までとする!」くらいの方針が良いだろう。

そしてその方針の下に業務プロセスを設計し、省力化を図り、そして「生産性向上」を図るのだ。お勉強の得意な政治家や官僚達であれば「クジゴジ」(9時~17時)を実現し、国民に生産性向上のお手本を見せることができるハズだ。

国会関係者の誰かが「過労自殺」をしてしまってからでは遅い!!

[内閣答弁作成プロセス:「1.質問受理と内閣への送付」画面]

<データ項目一覧画面>


[雛形ダウンロード (無料)]
<類似プロセス>
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